君だけの星へ
「……望月?」

「………」

「おいコラ、聞いてんのか」

「……えっ、あ、はい……」



斜め後ろにいる桐生さんに急かされて、わたしはようやく机の上の問題集を広げた。

そんなわたしの様子に、彼は眉を寄せて首をかしげる。



「おまえ今日、やけにぼんやりしてるな。具合でも悪いのか?」

「な、なんでもないですよ。いいから始めましょう」

「まあ、ならいいけど」



ふっと息を吐いて、桐生さんも自分の手元にある参考書をパラパラめくりだした。

それからわたしの問題集も取り上げ、自分の参考書と見比べ始める。



「よし、それじゃあ今日は79ページの問8からな。前回教えたところの復習になってるから、とりあえず解いてみて」

「はい」



わたしは返事をして、桐生さんから受け取った問題集に集中しようとした。

だけどシャーペンを持っても、じっと問題を見つめても。

その内容が、まったく頭に入ってこない。
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