君だけの星へ
「……どうした? こないだは同じ様式の問題、解けてたじゃねぇか」



宥めるような、怒りを含まないその声音に、今度は下を向いて押し黙る。

そして彼が、次の言葉を話す前に……わたしから、口を開いた。



「ごめん、なさい。わたし、なんだか今日は具合が悪くて」

「あ? やっぱりそうだったのかよ」

「はい」



そのときわたしは、初めて桐生さんに対して嘘をついて。

だから、バレないように、勘づかれないようにと祈りながら……ひざの上に置いた両手を、ぎゅっと握りしめていた。



「だから、申し訳ないんですけど……今日はもう、終わりにしてください」



……気づいたの。気づいてしまった、自分の気持ちに。


荷物をまとめてドアの前に立った彼を、ぼんやりと見つめる。



「それじゃあ、お大事に。今日は早めに寝とけ」

「はい」

「次会うときは、いつもの馬鹿みたいな笑い顔見せれるくらいには回復しとけよ。おまえがおとなしいと、張り合いねぇし」

「……はい」



──すきだ。

わたし、桐生さんがすきなんだ。
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