君だけの星へ
部屋の中に、ピピピ、という電子音が鳴り響く。

服の中からそれを取り出して見せると、彼は大げさにため息をついた。



「38度4分って……完ッ全に風邪だろこれ」



体温計を片手に、桐生さんは呆れたようにわたしを見つめている。

その視線を受けて、わたしは居心地悪く目を泳がせた。



「回復しとけって言っただろうが。なんでよりによって悪化させてんだよ」

「うぅ……ごめんなさい……」



もっともな彼の言い分に、ベッドに腰かけた状態で、しゅんとうなだれた。

桐生さんは再びため息を吐き、それから体温計をケースにしまう。



「まあ、ひいちまったもんは仕方ねぇ。とっとと寝てさっさと治すんだな」

「え、でも、勉強は……」

「アホか。病人に無理やり勉強させる家庭教師がどこにいんだよ」



そう言ってぺし、と手のひらで軽く頭をはたかれるけど、その力加減は病人相手モードらしく、全然痛くない。

いいから寝ろ、と仁王立ちした桐生さんに促されて(……命令されて?)、わたしはしぶしぶベッドに身体を横たえた。

熱があると自覚したせいか、一気に身体がだるくなった気がする。
< 71 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop