君だけの星へ
「でも桐生さん、よくわたしに熱があるってわかりましたね……」

「今日会って、まず顔がいつもより赤かったしな。それに目付きもぼんやりして、歩いててもなんか足元フラフラしてっし」



……顔が赤いのは、熱のせいだけじゃないかなぁ……。

ぼーっとする頭でそんなことを思っていても決して口には出さず、おとなしく布団をかぶっていた。

すると身体を屈めた桐生さんが、顔を覗きこんでくる。



「おまえ、昼メシ食った?」

「食べました……」

「じゃあ、薬とか、冷えぴたはどこにある?」

「え? っと、たぶんキッチンの、食器棚の上に救急箱が……冷えぴたは、えっと……冷蔵庫の中に、あると思います」

「わかった」



うなずいて、彼は身体を起こす。



「悪いんだけど、探させてもらう。取ってくるから待ってろ」

「え?」



思わず目をまるくして、わたしは桐生さんを見上げた。

──だって今のわたしは、ちゃんと勉強できるような状態じゃなくて。

だから、家庭教師である彼の役目は、そこで行き止まりなはずで……。
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