君だけの星へ
自分を見上げるわたしの視線の意味に気づいたのか、桐生さんがムッと眉を寄せた。



「なに、おまえもしかして、俺が誰もいないこの家に、病人をひとり残して帰るとでも思ってんの?」

「や、悪い意味じゃなくて、だって、あの……むしろ、帰った方がいいですよ。移っちゃう、かもしれないし……」

「アホか」



さっきと同じせりふを言って、また彼は呆れたような表情をした。

そして見上げるわたしのひたいに、そっと右手を乗せる。



「ほっとけねーだろ。おまえは一応、俺の生徒なんだから」



──ああ、今、確実に熱が上がった。

口調は相変わらず不機嫌なのに、触れる手はやさしい。



「……ごめん、なさい……」



ぼんやりと見つめたまま、わたしが小さく呟くと、桐生さんは満足げな笑みを浮かべた。

その表情にまた、体温が上昇する。
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