君だけの星へ

恋するオトメ心



『十人十色というからには、心の数だけ恋の種類があってもいいんじゃないですか。』


           レフ・トルストイ



   ◇ ◇ ◇



「………」



廊下からわたしの部屋へと入ってこようとした桐生さんは、その瞬間ドアノブを掴んだまま見事に固まった。

目の前ではわたしが、床に三つ指をついて深々と頭をさげているわけで。



「いらっしゃいませ桐生さま。ようこそお越しくださいました」

「いや、いきなり何キャラだよおまえ。どこの旅館の女将?」

「その節は、大変お世話になりまして……」

「聞けよ人の話」



鋭くつっこみを入れられ、わたしはしぶしぶ顔をあげた。

相変わらず正座のまま、不満げに唇をとがらせる。



「ふぅ。桐生さんには順応性っていうものが足りないんですね」

「いやいやいやそういう問題じゃねぇだろ」



言いながら、桐生さんはようやくドアを閉めて部屋の中に入ってきた。

わたしもカーペットから立ち上がって、勉強机の前にあるいつもの椅子に腰かける。
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