君だけの星へ
ていうか、ね。ほんとは内心、心臓バクバクなわけで。

それをごまかすために、いつもより変な行動をとってみたわけなんですよ。



『桐生さん、いかないで……っ』



だってこないだのことを思い出しただけで、あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうになるんだもん……!

こ、高熱の力ってこわい……!!



「……まあ、そんだけアホなことできる元気があんなら、もう風邪の方はいいのか」



彼に背を向けてもんもんと考え事をしていると、後ろの桐生さんはそう言った。

わたしはどうしても、羞恥心からあのときの話題に触れたくなくて。



「……おかげさまで」



なんとかそれだけ小さく返し、それから机に置いていた紙袋を掴むと、笑顔を作ってくるりと振り向いた。



「これ、お礼のたい焼きです。おやつに食べましょう!」

「え? ……ああ、さっきからしてたのこの匂いか」



予想外だったのか、彼は目をまるくしてそう話す。

そんな彼に少しだけ不安になったわたしは、「たい焼き、嫌いでしたか?」と控えめに訊ねた。



「いや、好き。サンキュ」



そう言って桐生さんは、軽く笑みを浮かべる。


……いや、違う違う。今の『好き』は、たい焼きに向けられたもの!

だから勝手に暴れるな、わたしの心臓!
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