君だけの星へ
それぞれがたい焼きを食べ終わってから、わたしたちは数学の勉強を始めた。

テストが近いということもあって、教える側の桐生さんはいつも以上に力が入っている。



「いいか望月、やるならパーフェクト、トップを目指せ。他の奴らなんか後ろ足で蹴落としてやる勢いで」

「なんて物騒な……!」



……まあ、ただガラが悪いだけとも言えるけど。

でもいくら最近わかるようになってきたといっても、前回のテストで38点だったこのわたしが、数学でトップなんてとれるんだろうか。



「つーか、むしろ1番以外俺が認めねぇからな。もし赤点なんかとった場合命はないと思え」

「………」



きっぱり話す桐生さんに対し、わたしはあさっての方向を見て見事に押し黙った。


……いちばん。

1番、かあ……。



「……そんなの、なれなくてもいい」

「あぁん?!」

「ヒッ!! ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」



わたしの呟きを聞き逃さず低い声を出した彼に、ひたすら平謝りする。

桐生さんはしばらく無言で視線の圧力をかけてから、ふっと息をついて表情を崩した。



「まあとりあえず、最終的には自分の力を信じろ、としか俺からは言えねぇけどな」

「………」



──ねぇ、桐生さん。わたしは勉強で1番なんて、なれなくてもいいんですよ。



「当日までに風邪は完璧に治して、万全な体制で迎えるように」

「……はい」



教えてください、桐生さん。

どうしたら、わたしはあなたの“1番”になれますか。
< 79 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop