君だけの星へ
最悪な再会
『幸福は香水のようなもの。人に振りかけると自分にも必ずかかる。』
ラルフ・エマーソン
◇ ◇ ◇
「ただいまー……」
つい1時間半ほど前の出来事から立ち直れないまま、はぁ、とため息を吐いて玄関のドアを開ける。
すると玄関に、見慣れない男物の靴があることに気がついたけど……家の中からパタパタと足音が聞こえてきて、わたしは顔をあげた。
靴を脱ぎながら見ると、お母さんがリビングから出てきたようだ。
なぜか不機嫌そうな様子で、わたしの前に仁王立ちしている。
「おかえり! ちょっと世莉、今日は6時までに帰ってきてって言ったでしょう?」
「え? ……あー……」
お母さんの言葉に、朝の記憶を手繰り寄せる。
そういえば、家を出る前にそんなことを聞いたような、聞かなかったような、ごにょごにょ……。
「まったくもう……早くかばんを置いてリビングにいらっしゃい。大事な話があるから」
仕方ないとばかりに息をついて、お母さんは再びリビングの方へと歩いていく。
わたしはその『大事な話』とやらに疑問を持ちつつも、言われた通りかばんを置いてこようと、2階の自室へと向かった。