君だけの星へ
「それじゃー世莉、今がチャンスだね」

「へ?」



にっこり笑う有紗に、わたしは思わず目をまるくする。

チャンス、って?



「恋人がいようがいまいが、そんなの関係ないわ。今なら全部『知らなかった』で済まされるから、思いっきり誘惑しなさい」

「ええぇえぇえ?!」



いやいやいや、そういう問題じゃないような……!

つ、つまりそれって、暗に恋人がいたとしても奪ってしまえってことでしょ?!



「世莉……目的のためには手段を選ばない、それが恋する乙女ってものなのよ」

「こわっ!! 恋する乙女こわっ!!」



大真面目に物騒なことを言っている有紗に対し、力いっぱいつっこんだ。

彼女は「まあそれはいいとして、」とあっさり呟き、改めてわたしと視線を合わせる。



「けど世莉、桐生さんと両思いになりたいんでしょ?」

「う……うん……」

「ん~、じゃあさ、まずは今の家庭教師と生徒って立場を利用しちゃいなよ」

「えー?」



どういうこと?、と首をかしげるわたしに、有紗はぴっとひとさし指を立てて見せた。
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