君だけの星へ
「ベタやるのよ、ベタ」

「ベタ?」

「ほら、もうすぐ中間テストでしょ? それにかこつけて、『テストでいい点とれたらキスしてください』とでも言ってみれば?」

「キ……ッ!?」



いっ、いきなり何を言い出すのこの子は……!

そそそそんなこと、桐生さんに対して口が裂けても言えるはずないし!



「モチベーション上がるし、それがきっかけで桐生さんと今までより近づけるかもしれないし、一石二鳥じゃん」



あっけらかんとそう話す有紗の向かいで、わたしはただ、口をパクパクさせることしかできない。

そして、そのままぱたりと机に伏せた。



「もー……有紗の話は極端すぎる……」

「けど、ご褒美作戦はいい考えでしょ? まあキスとまではいかなくても、何か頼んでみなよ」

「うーん……」



ご褒美作戦……確かにテストが近い今なら話を切り出しやすいし、うまくいけば、もっと彼と近づけるチャンスかもしれない。

今のまま、ただおとなしくしてるだけじゃダメなんだ。

わたしは両手で握りこぶしを作り、机から顔をあげた。



「うん! わたしがんばってみる……!」
< 82 / 175 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop