君だけの星へ
「もし本当に90点以上とれたら、行き先はおまえに決めさせてやろうと思ってたけど」

「──え、」

「この点数なら、俺が勝手に決めさせてもらうからな」



とっさに顔をあげたわたしの目に映るのは、やっぱり意地悪く笑う桐生さんの姿。

え、今、なんて。



「え……桐生さん……?」

「まあ、おまえがんばってたしな。赤点スレスレだったこと思えば、十分すぎるくらい成長しただろ」



やれやれとため息をついて、桐生さんは椅子から立ち上がる。

そしてわたしの前で、目線を合わせるようにしゃがんだ。



「……今週の日曜日、あやめ堂に午後1時な。遅れんなよ」



そう言いながら、わたしの頭の上に答案用紙を乗せた桐生さん。

その言葉を理解して、わたしはパッと顔を明るくさせた。



「桐生さん……っ!」

「ま、ご褒美っつーことで、今回は大目にみてやるよ」



さっさと立ち上がった桐生さんは、そう言って肩をすくめる。

わたしは笑顔のまま、「ありがとうございます」と返して。


……どうかこの恋の結末が、やさしいものでありますように。

そう、小さく願った。
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