君だけの星へ
プラネタリウム
『天体の運動はいくらでも計算できるが、人の気持ちはとても計算できない。』
アイザック・ニュートン
◇ ◇ ◇
「桐生さん、今日はどこに連れていってくれるんですか?」
道を歩く足は止めないまま、わたしはとなりの彼を見上げてそう訊ねる。
桐生さんは「着いてのお楽しみ」と言って、にやりと口角をあげた。
──あの日言われた通り、日曜日の午後。わたしは約束の30分ほど前に到着するよう見計らって、あやめ堂へと向かった。
きっと落ちついていられないと思ったから、余裕を持って待っていようと思ったんだ。
「おー、ちゃんと約束通り来たな。えらいえらい」
「わたしのことなんだと思ってるんですか……!」
そして約束の10分前にあやめ堂に現れた彼はいつも会うときのように眼鏡をかけていなくて、それにまたドキドキしたりして。
今日はお孫さんお借りします、なんてちゃんとおじいちゃんに礼儀正しく挨拶している桐生さんは、見ていてなんだかおかしかった。
「まあ、移動手段は車でもよかったんだけど。どうせすぐ近くだし」
電車で二駅ほど移動した後、駅を出て歩きながら彼はそう話す。
そうなんですか、なんて相槌を打ちつつ、桐生さんの運転する車に乗ってみたかったかも、なんてちらりと邪なことを考えた。
──そうして駅から歩きだして数分後、桐生さんはようやく足を止めた。