君だけの星へ
「え、ここ、って──……」

「そ。プラネタリウム」



桐生さんが連れてきてくれたその場所とは、市内にあるプラネタリウムだった。

存在自体は知っていたけれど、今まで足を踏み入れたことのなかった場所。

目を瞬かせながら建物を見上げるわたしの横をすり抜けて、桐生さんはさっさと中へと入っていく。



「あっ、ま、待ってくださいっ」



慌ててその後ろ姿を追うと、彼は声をかける間もなく、受付でふたり分の入場料を支払っていた。

わたしも財布を出そうとするけど、当たり前のように制止されて。

そりゃあ、『どこかに連れていって』と言ったのはわたしだけど……だからってこんなふうにおごってもらうつもりは、なかったんだけどな。


それからまた、慣れた足取りで歩きだした桐生さんの後にわたしも続いていく。

そして彼が開けてくれた重そうな扉を、初めての経験にどぎまぎしながら通り抜けた。
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