君だけの星へ
……だけど。



「でも、桐生さん。少しはふたりの気持ちを信じてあげてもいいじゃないですか」

「じゃあ逆に訊くけど、おまえはどうして信じるんだよ?」



横目に見ながら訊き返されて、わたしは一瞬思考をめぐらす。

そして、こたえた。



「……その方が、ロマンチックだからです」



まるで子どもみたいな理由だけど、今のわたしが思いついたのは、そんな言葉だけだった。

わたしの言葉に対し、桐生さんはめずらしく目をまるくして。

そしてまた、どこか皮肉っぽい笑みを浮かべる。



「ハッ。ロマンチックだから、か」



じゃあ、それでいいのかもしれないな。

小さく呟いて、再び彼は前を向いて歩きだす。



「………」



その横顔を盗み見ながら。わたしは、もう一度深く考えてみた。

……すきな人がいる。でも、その人とは決められた日にしか会うことが許されない。

きっと、さみしくて泣いてしまう。そして、1番その涙をぬぐってほしいと思うだいすきな人は、そばにいないんだ。
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