僕と再婚して下さい。
口調は静かだけど、慎吾が怒っているのは確かだ。

気まずい空気が流れる。

慎吾は黙って外の景色を眺めている。

せっかく東京まで来たのに。

これじゃあ全然楽しくない。

慎吾はあたしの為にこの部屋を撰んでくれたんだ。


「あの、すみませんでした」

あたしは言葉を続けた。

「慎吾があまりにもここまで来るのにスムーズ過ぎて、慣れてるのかなって思ってしまったんです」

「スムーズに着いたら、慣れてるってことになるのかよ?」

「いや……。知らない土地に来る時って、何かしら起きません? 道に迷うとか。ホテルの駐車場が分からないとか……」


少なくともあたしはそいうタイプだったりする。
< 206 / 394 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop