夜を望む
夜を望む



 眩しいと思うことがある。

 都会に暮らし始めてからというものの、とくに。



 ビルが積み木のように次々と出来て、いつか空がわれて、手か伸びてくるのではないかと思う。
 ここは、まるで箱のなかのように思えるのだ。箱。私が思う世界史というのはここでしかないから、そう感じるのかも知れない。

 ただ、別の世界に行けてしまう方法は、私は知っている「まさか」




「それって、死ぬっていうことじゃないよね」




 彼は何でも知っているような気がした。何でも。きっといろんな人を見てきたし、知ってきたのだろう。
 私とは違う、都会育ちのにおいをいつも感じていた。

 彼と私は、違う。






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