【短編】大好きだとか、内緒だし。
 
けれど、次の日の練習で、状況は一変する。

紗英が残り2人のメンバーを説得し、練習に顔を出してもらうことになったのだけれど、まずは5人でパス回しをしていると、なぜか諸岡君は、不自然にあたしへのパスを避けるのだ。

しかも、体育館に居合わせた別チームの人たちと実戦形式で練習をしていると、当然ながら、相手チームはあたしのシュートを阻止するべくブロックをしに来るわけで、そのときも。


「春田さん、パ、パスを……」

「い、いきまーすっ」

「……ごめん、やっぱいい」

「え」


なんていう、やり取りが。

どうした諸岡君、というよりも、急に避けられはじめた意味が分からず、それに加え、紗英やチームのメンバー、相手チームの人たちにもそのやり取りをしっかりと見られてしまって、恥ずかしいやら、悲しいやら……。

ボールはするりと相手チームの子に奪われ、また、得点も奪われてしまったのだった。


ていうか、諸岡君、プレー中にまで避けることないじゃん、どうしたのよ、一体。

あたし、泣きそうなんだけど……。





それでも、時間というものは進むもので、体育祭本番の日が容赦なくやってきた。

チームの雰囲気はお世辞にもいいとは言えず、紗英が一生懸命に盛り上げてくれようとしている姿が、近くで見ていて、とても痛々しい。
 
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