【短編】大好きだとか、内緒だし。
「いよいよ決勝だよ!頑張ろー!」
そう言って拳を突き上げる紗英に、みんなもあたしも「おー!」と言うのだけれど、内心は、決勝の試合中にも避けられたらどうしよう……という不安が心の中を占めていて、それはおそらく、諸岡君以外の全員が、そう思っている。
諸岡、避けるなよ、と。
危なげなく、とまではいかないまでも、なんとか決勝まで勝ち残れたのだから、この際、優勝したい気持ちがあることにはある。
けれど、諸岡君に避けられはじめてから、あたしのシュートの確率がガタリと下がっていて、それがここまでなんとか勝ち残れた原因でもあるため、プレッシャーもかなりのものだ。
「つぼみ、数打ちゃ当たるんだから、ボールを持ったらバンバンシュートしなよ」
「……う、うん」
赤いゼッケンに袖を通した紗英が、そう言って励ましてくれ、まだゼッケンを付けていなかったあたしに「もう出番だよ」と促す。
重い気持ちでゼッケンを付けるのは、これで5回目になるのだけれど、やっぱり気が重い。
紗英からは「諸岡って極度の照れ屋だから。気にすることないよ」と言われていて、ほかの2人の男子メンバーからも「諸岡、なんか機嫌が悪いみたいだった」と励ましてもらった。
ただ。