【短編】大好きだとか、内緒だし。
あたしも、前は紗英に付き添ってバスケ部の見学をすることもあったけれど、なんせ、ボールの取り合いともなると迫力がものすごく、競り合いには、わりとケガもつきものだ。
中学の頃、体育の授業のバスケのとき、パスが回ってきてボール持ったら、相手チームの子に思いっきり取られ、接触した箇所が悪かったようで、親指と人差し指の間にケガをしたことがあって、それ以来、なんとなく敬遠している。
真冬だったから、傷の治りもけっこう遅く、お風呂のときは、ピリピリとしみるしみる。
応援したり、観戦するのは、もちろん好きだ。
ただ、実際にコートに立つとなると、痛かった思い出が払拭できずにいるのか、どう動いたらいいか分からなくなり、固まってしまう。
足手まといもいいところで、だからあたしは、今度の体育祭でも、綱引きや大縄跳び、といった、あまりチームに迷惑がかからないような種目に手を挙げるつもりでいる。
けれど、現実はそう上手くもいかないもので、数日後のホームルームで体育祭の出場種目を決めるとき、まだ立候補もとっていないのに、なぜかバスケのところにあたしの名前が。
春田はクラスであたしだけだ。
お、おかしい……。