【短編】大好きだとか、内緒だし。
 



次の日の練習も、その次の日の練習も、集まったのは初日のメンバーの3人だけで、残り2人の男子は、紗英の追跡もむなしく逃亡し、相変わらず、諸岡君とは一言も話せないままに今日もパス回しから練習がはじまった。

今日は体育祭の委員の集まりがあるそうで、少し顔を出したら紗英はそちらに行く、と前もって言われていて、実質、諸岡君と2人きりだ。


「じゃあ、あとはよろしくー!」


制服姿のまま、パス回しにつき合ってくれた紗英は、携帯で時刻を確認すると、スカートの裾を翻しながら体育祭を出ていった。

うー、どうしよう……。

シュートの練習とか、したほうがいいのかな。

ちらりと諸岡君を窺い見ると、ボールを持ったまま、ぼーっと立っているだけで、どういう練習をしたら実戦で役立つのかがいまいち分からないあたしは、早々に途方に暮れる。

と。


「……こ、小泉さんと話して、は、春田さんは、シュート要員に決まりました。シュ、シュートの練習を、今日はしま……しましょう、か」

「はあ」


ボールを持った諸岡君があたしのところまで歩いてきて、そう言い、またスタスタともとの位置まで戻り、振り向くと、す、と構える。

どうやら、そこからパスを出すらしい。
 
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