【短編】大好きだとか、内緒だし。
 
ちょうどゴールのそばに立っていたし、シュート要員に決まったのなら、それはそれで構わないのだけれど、諸岡君ともあろう、チームの柱が、あまりにも噛み噛みで話すものだから、時間差でおかしくなり、つい笑ってしまう。

しかし、ちゃんと喋れるんだ、諸岡君。

あたしとはちっとも話してくれないから、もしかして嫌われている? なんて思っていたのだけれど、初日の練習のときに顔を赤くしていたのと同じく、赤い顔で構えている諸岡君に、その不安はなくなったあたしだった。


「パ、パスします」

「はい」


諸岡君があたしの運動能力に合わせて緩めにパスを出してくれるため、ボールはしっかりと手の中に収まり、そこから、えいっ!とシュートを放てば、3本に2本は決まってくれる。

シュート要員とは、おそらく、攻防にはあまり加わらずにゴールの下で待ち構え、相手のディフェンスが追いつく前にシュートをする、と、そういう意味なのだろうと思う。

それなら、バスケにちょっとばかし思い出のあるあたしにも、十分楽しめそうだ。

紗英と諸岡君の気遣いに、感謝、感謝である。


「おお、見事なボールさばき!」

「え、まあ、バスケ部、だから……」
 
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