【短編】大好きだとか、内緒だし。
次第に2人でいることにも慣れたのか、諸岡君はディフェンスをかわしながらパスを出す真似までしてくれて、思わず拍手をすると、諸岡君は照れくさそうに謙遜なんてする。
エースなんだから、もうちょっと、えっへん、としていてもいいような気もするけれど、とにもかくにも、なんだかいい雰囲気だ。
一時はどうなるかと思っていた練習や試合当日のチームワークも、この調子だと、けっこういい線まで行けるかもしれない、なんて思う。
「は、春田さん、本当にシュート上手だね」
「いやいや、諸岡君のパスを無駄にはできないから。その気持ちでシュートしてます!」
「……、……」
言うと、なぜか諸岡君は、突然、口ごもり、顔はおろか、耳まで真っ赤にする。
……え、あたし、変なこと言った?
あまりに真っ赤になって照れているから、特に深い意味もなくそう言ったあたしのほうも、だんだんと恥ずかしくなってきてしまって、最後には、あたしたちの間に微妙な空気が漂う。
無口で寡黙なバスケ部のエース、と名高い諸岡君なのだけれど、そこに、極度の照れ屋さん、と、ぜひ付け加えたいあたしだった。
あんまり照れないでほしい。
あたしが恥ずかしい……。