螢狩

両親

ただ、父さんは教えてくれなかった。

母さんの名前を。以前一回だけ質問した事があった。

初めて、母さんの浴衣を着た日に。

「思い出すのは辛いから」

父さんは、それだけしか言わなかった。

だから俺は言った

「俺が憎い?」

俺を産んで母さんは死んだから。

すると父さんは焦り驚き必死になった

「そんな事無い!」

二人だけの部屋に、父さんの大きな声が響いた。

俺は、自分の言葉に後悔した。
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