螢狩

記憶

父さんは、ゆっくりと口を開いた。

「涼谷、もうすぐ誕生日だな」

俺も父さんも、夜空を見上げていた。

「うん」

つまり、それは母さんの命日でもある。

「何歳になる?」

「16」

「…16歳だった」

「…え?」

俺は父さんの方を見た。

何かを、懐かしむような表情をしていた。

「何…が…?」

俺は恐る恐る聞く。

「涼谷が産まれた時、母さんはまだ16歳だった」
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