螢狩

対極

言葉が出なかった。

母さんは…16歳で俺を産んで死んだ―…

俺は拳を握り締めながら、視線をそこに落とす。

父さんの言葉に、静かに耳を傾ける。

「とにかく無口な女性だった。必要最低限の会話しかしない。何も喋らない上に無表情で、何を考えているのか…全くわからなかった」

でも、そんな話をする父さんは、何だか嬉しそうに見えるよ。
< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop