冷徹上司のギャップに振り回されています
朝に渡された仕事をなんとかこなした私は、夕日が射し込む事務所内を観察する。
広さは大体、十五、六坪。だけど、三浦さんの席の後方に応接室があるし、隅には給湯スペースもあるから、事務所全体で二十坪そこそこというとこか。
腰から天井までの大きな窓に、背を向ける形で設置されている東海林さんのデスクには、主の姿が見えない。
昼前に外回りに出たままの東海林さんは、もうずっと戻ってきていなかった。
東海林さんのデスクは、事務所の中で一番広くて大きい。
だけど、そのデスクのスペースがほとんど埋もれて見えなくなるくらいに、机上は乱雑だ。
……まぁ、それだけ仕事が山積みなのだろう。
それ以外に、今日一日仕事をしていてなんとなくわかったことは、喫煙者はいないということと、昼休みは基本、自由だということ。
あとは、日中の外回りの仕事が多いということ。
もちろん、三人のうち、誰かひとりは事務所に残るようにスケジュールが組まれているようで、私がひとりで留守番しなければならないなんてことはなかった。
私はというと、今朝、東海林さんに渡された仕事のほかに、三浦さんや本田さんの仕事の手伝いも、できる範囲でさせてもらっていた。
少し前までは、家具や生活用品の製造・販売をしているメーカーで一般事務として勤めていた。
その時も、ファイリングやデータの集計、来客応対や郵便物の仕分けなどが主な仕事内容だったから、今日に活かせて助かった。
欲を言うなら、経理経験があれば、ここではもう少し役立ったかもしれない。
なんて、そんなことを言っていても仕方ないから、出来ることをやるしかない。
一心不乱に働いて、今の私が置かれている状況を打破しないと。
「有川さん、お疲れ様。定時だよ」
「えっ。もうそんな時間ですか?」