冷徹上司のギャップに振り回されています

悶々とした気持ちのまま歩いていたけど、無意識ながらに、ちゃんと地下鉄にも乗って自宅に着いていた。
ワンルームの部屋に足を踏み入れると、ドッと疲れが出たのか、その場に座り込んでしまう。
 
カサッというレジ袋の音に目を向け、コンビニで買った求人情報誌を手に取った。
しかし、中身もそこそこしか見ぬうちに、今度はカバンに手を伸ばす。

「やっぱり、ラッキーだったよね、私」
 
カバンから出したのは、今日、東海林さんがくれた仮社員の契約書の控え。
 
まだパート扱いだけど、本採用になったら一般事務と同じくらいの給料がもらえるみたい。
福利厚生もきちんとしてるし。あのまま普通に就職活動してたって、すぐに決まるかどうかなんて、このご時世じゃわからなかったわけだから。
 
キャバクラみたいに、時給五千円とまでは到底いかないけど、あれはやっぱり抵抗あったし。
普通にバイトするより、今の事務所の方が断然手取りとかいいし。 

……うん。社内の人はいい人だし。
雇い主は……ちょっとクセがあるけど、全然許容範囲内だ。

「ていうか、せめてそのくらいイイことないとね。じゃないと、このままじゃ割に合わないよ、私の人生!」
 
ひとりきりの部屋でわざと明るく振る舞い、声を上げて立ち上がる。
 
壁に掛けてあるカレンダーを見た私は、七月はまだあと一週間残っているにもかかわらず、それを思い切り破り捨てた。
 
今年の七月は、人生最大、最悪の月。


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