冷徹上司のギャップに振り回されています
「充くん、祥吾くん、おはようさん。今日もなんとか遅刻せずに済んだなぁ。ははっ」
 
ちょっとお腹の出ている、丸いメガネのいい人そうなオジサン。
身長は、155センチの私よりも10センチくらい高そうだ。

デスクにカバンを置いて、椅子に腰を下ろすところを見ると、この人も社員なんだろうか。
……だけど、本田さんはともかく、所長である東海林さんを『充くん』と呼ぶこのオジサンは、いったい何者なんだろう?

つい凝視していたら、オジサンと再び目が合った。

「初めて見る顔だ。もしかして、新しい事務員さんかい?」
「えっ、あ、あの」
 
たぶん、そういう話だったとは思うんだけど……。
 
昨日の記憶を辿れば、そのはず。
でも、さっきの東海林さんの態度を考えると、拒否されているのかもしれない。

そう思う私は、オジサンの質問にハッキリとしたことが答えられなかった。
戸惑っている私をよそに、ようやくまともに顔を上げた東海林さんが口を開く。

「一応、そういうことです。求人出す前に見つかって手間が省けましたよ。まぁ、彼女次第で、その手間は掛かることになるかもしれませんが」
 
うわぁ。東海林さんって本当にシビア……。
税理士ってこういう人が多いんだろうか。
いや。でも、ここにいる本田さんと、あのオジサンはそういう感じじゃない。

きっと、東海林さんが、特別厳しい人なんだ。

「まあまあ。出勤初日から、そんな怯えさせることを言うんじゃないよ。ねぇ?」
「え。あ、はは……」
 
オジサンがフォローしてくれたけど、目の前には顔色ひとつ変えない冷徹上司がいるわけで。
どう反応すればいいのか判断できずに、とりあえず愛想笑いをしておく。

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