上司と上手につきあう方法【完結】


――――……



「今日はダブルベリー恒例の社員旅行です。お天気にも恵まれました、日ごろの鬱憤を忘れて、思いっきり楽しみましょう!」

「はーい!」



ムードメーカーである総務部長の言葉に、マイクロバスの前に並んだ私たちは、元気よく手を挙げる。

いや、私以外だ。私は『元気よく手を挙げる一団』には含まれていない。


やっと落ち着いてきたと思ったのに、どうしてこうなった?

おなかが痛いとか、適当な、罪のない嘘をついて帰れないだろうか……。

いや、ダメだ。

『約束』がある。帰ることなんて出来ないよ……。



そうやって、一人悶々と悩んでいると、私の斜め前に立っていた紗江子が、振り返りつつ、何気ない様子で口にした。



「でもさー、びっくりだよね。山本君たちも来るなんて。っていうか、太っ腹だよね、本社」

「――そうだね……びっくりだね……」



< 113 / 361 >

この作品をシェア

pagetop