上司と上手につきあう方法【完結】
――――……
「今日はダブルベリー恒例の社員旅行です。お天気にも恵まれました、日ごろの鬱憤を忘れて、思いっきり楽しみましょう!」
「はーい!」
ムードメーカーである総務部長の言葉に、マイクロバスの前に並んだ私たちは、元気よく手を挙げる。
いや、私以外だ。私は『元気よく手を挙げる一団』には含まれていない。
やっと落ち着いてきたと思ったのに、どうしてこうなった?
おなかが痛いとか、適当な、罪のない嘘をついて帰れないだろうか……。
いや、ダメだ。
『約束』がある。帰ることなんて出来ないよ……。
そうやって、一人悶々と悩んでいると、私の斜め前に立っていた紗江子が、振り返りつつ、何気ない様子で口にした。
「でもさー、びっくりだよね。山本君たちも来るなんて。っていうか、太っ腹だよね、本社」
「――そうだね……びっくりだね……」