上司と上手につきあう方法【完結】
「まさかこれって……」
「それ、俺の私用携帯の番号」
「ッ……」
「美琴の番号、変わってないんだな」
「なんで……」
「うーん。消せなかったんだよね。意味はないけど、なんとなく」
じっと自分を見つめる朝陽の黒い瞳に、囚われそうで。
こんなこと彼の気まぐれだとわかっているのに、怖くなった。
「電話ちょうだいよ。今度ゆっくり話そう?」
甘い声に、その場に崩れ落ちたくなるほどのショックをうける。
「冗談、やめて……」
私は弾かれたように踵を返し、皆が待つ部屋へと向かっていた。
そして、紗江子に会費を押し付け、「ごめんなさい、会社から呼び出しなの」と大嘘をついて、部屋にいるみんなに頭を下げて居酒屋を飛び出していた。
――――……