上司と上手につきあう方法【完結】
「そのことに関しては、美琴が悪いんじゃないよ。そう仕向けたのは俺だし」
「え……?」
仕向けた?
意味が分からなくて首を傾げると。
「美琴が俺に夢中になってくれるように、相当気合い入れて、可愛がったもん」
朝陽は苦笑しながら、言葉を続ける。
「だけど、ふと、思ったんだよ。美琴、本当に俺のこと好きなのかなって」
「――」
「俺が演じている、美琴を上手に可愛がる俺が好きなだけで、素の自分を出したら、一気に嫌われる予感がして……怖くなった。勝手だよな」
朝陽は、軽くしゃがんで、砂だらけになってしまった私の浴衣の砂を、ぱっぱと手のひらで払う。
その仕草は優しくて、頼りになるお兄ちゃんみたいで……。変な意味じゃなく、昔の彼みたいで。
懐かしくて、鼻の奥がつん、と痛くなった。