上司と上手につきあう方法【完結】

朝陽のことは本当に好きだった。

私の大事な、苦くとも、一番輝いていた青春時代の思い出だ。



「好きな人がいる」


とは言え、はっきり好きと言えないまま、先回りされてフラれてしまったのだけれど……。


若干恥ずかしくなりつつ、だけど、精一杯の微笑みを浮かべた。



「あー……そっかあ……」



くしゃくしゃと髪をかきまぜながら、朝陽がほんの少し悲しげな顔をする。

その顔は確かに残念そうだけど、こうなることがわかってた、というようなそんな気配も持ち合わせていて、私は長年抱いていたもやもやが、なんとなく、霧のように消えていくような感触を覚えていた。



「――でも、ありがとう」

「え?」

「ずっと避けまくってたけど、ちゃんと話せてよかった。朝陽が勇気を出してくれたからだよね。ありがとう」

「――美琴……」



< 190 / 361 >

この作品をシェア

pagetop