上司と上手につきあう方法【完結】
もし私が朝陽と逆の立場だったら、きっと早々に声を掛け続けるのなんか諦めてる。
たいていの人間は、自分を拒絶する人間を、追いかける勇気など持ち合わせないと思う。勿論私だって、そうだ。
弱虫で、痛いことは嫌いで、出来れば平平凡凡に生きていたくて……。
「朝陽は本当に強い人だね。そういうところ、昔と変わってない」
私の言葉に、朝陽はなんだか、もう、まいったと言わんばかりに顔を歪めた後。
「あー、お前って……本当に……優しくて、いい女だよ。相手の男が、マジで妬ましい……」
「はいはい」
「本当だって!」
大げさにため息をつき、それでも私に負担をかけないようにか、笑ってくれた。
いい女だなんて、夢みたいなことを言ってくれるのは、元彼だからかな、なんて思いつつ、私はよれよれになった髪をシュシュでまとめ直しながら、ホテルのほうへ視線を向けた。