上司と上手につきあう方法【完結】
「顔色もだいぶよくなった」
「――ッ……」
額に感じる、部長のひんやりした指先と、手の甲。私を見つめる、まっすぐな瞳。
違った意味で、きゃーっと悲鳴を上げない自分をほめてあげたかった。
「謝らなくていい。寝たお前がずるずると座席から落っこちそうになったから、俺がこうしたんだ」
「そっ……そうだったんですか……いやでも、すみません……」
口の中が急速にカラッカラになるのが自分でもわかった。
シートの上に座りなおし、ぬるくなったペットボトルの水を口に入れる。
「――もうすぐ東京駅に着くな」
「はい……」
窓の外から腕時計に目を落とす部長。
そうか、もうついちゃうんだ……。
部長と一緒に帰ることになって死ぬほどドキドキしたのもつかの間、旅は一瞬で終わってしまったようだ。