上司と上手につきあう方法【完結】
イケメンにありがちな、無造作を装ってはいるけれど、実際は作り込まれた髪型とかじゃなくて、ごく普通の黒髪(しかも短め)だし。かけてる眼鏡だって、味もそっけもないメタルフレームの眼鏡だし。
なのに、きれいだ。
「――川島さん、雰囲気に酔うタイプですもんね」
手元にあった枝豆をつまみながら、アハハと笑う私は、どこか笑い方が変じゃないかな、とか気になってたりして。
せめて軽くメイク位直しておけばよかったなんて、思ったりして。
ちょっとドキドキするのは、いけないことだろうか?なんて考えちゃったりして――
いや、いけないに決まってるじゃん。だって相手は上司、部長だよ。
ドキドキなんてしちゃだめだ。
私は部下、上司は上司!
おまじないのごとく心の中で繰り返しながら、お代わりのビールを一気に煽る。
「部長、飲みましょう! 私今日、本当にイヤなことがあって、すっごく飲みたい気分なんです!」
そうだ。朝陽のことは早いとこ忘れよう。
元彼なんて、ろくなもんじゃないんだから――。