上司と上手につきあう方法【完結】
「ササグさん」
間違いであってほしいと思った瞬間、そのひとは部長の名前を呼んだ。
美しい、鈴を転がすような声だった。
彼女は間違いなく、部長を訪ねてきたらしい。
髪は緩く巻かれていて、ふわふわと肩を覆い、薄いブルーのワンピースも、仕立てのいいものだとわかる。
ほっそりした足はとても小さくて、品のいいパンプスに収まっている。
かなりの美人で、絵に描いたような清楚系お嬢様で、圧倒されてしまった私は、何も言えないまま、部長の隣で硬直していた。
「どう、して」
絞り出すような声で、部長が唇を震わせる。
「――話があるの」
彼女だ……。
部長を振った、彼女だ……!