上司と上手につきあう方法【完結】

勇気を振り絞って尋ねると、彼はテーブルの上から顔をあげ、首を横に振った。



「彼女に別れを切り出されて……何かが俺の中で、切れてしまったんだ」

「切れた……」

「この十年、ただがむしゃらに認められたいばっかりで……。仕事を辞めて地元に帰ろうと決めたら、ホッとした。そういうことだ」



そして部長は、すっと立ち上がって、私を見下ろす。



「俺がダブルベリーを辞めるってことは、実家には伝わっているはずだ。帰って来いと言われているわけじゃないが、行かないわけにもいかない。俺が一人で帰ってあれこれ説明しても、たぶん……まぁ、簡単に理解してもらえるとは思えない……今までの十年はなんだったんだってことになるからな」

「はい」

「で、昨日は……ああいう風に頼んでしまったが、やっぱり突然すぎたと思う。お前の気持ちもあるし、無理ならもう――」

「無理じゃないですよ。行きます」



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