上司と上手につきあう方法【完結】
そして窓のほうにしっかりと顔を向け、若干眩しそうにしながら目を閉じている。
こっち向いたほうが眩しくないのに……。
不思議に思いながら、そんな部長の姿を何気なく見つめる。
着なれた感じのシャツに、麻のジャケット。デニムに身を包んだ彼は、今日も相変わらず素敵だ。
部長って、人懐っこくてたくさんの人に囲まれる朝陽とは全然タイプが違うけど、やっぱりそれなりにモテる人だと思う。
確かにちょっと怖いけど、会社ではクールビューティーなルックスで人気はあったし、美女と10年も付き合ってたんだし……。
そんな人が、わざわざ私に「かわいい」なんて嘘つくなんて……なんか意外だと思ったけれど、やっぱりモテる人はそれなりに女の子が喜ぶようなことを言えるってことなんだろうか。
それとも、部長の『かわいい』は、本気の『かわいい』じゃなくて、いわゆる予行練習的な発言だったりする?
あ、そうだ。きっとそうだ。練習だ!
練習なら、確かに必要だよね。私だってちゃんと演技できるか心配だもん。
電車を降りたら、さっそく提案してみよう。
もっと練習したほうがよくないですかって。