上司と上手につきあう方法【完結】

私はにやける頬を引き締めるため、ぎゅーっと奥歯をかみしめ、さらにジタバタと足を踏み鳴らしたくなる気持ちを必死で抑え、

「ササグさん……」

と、彼の名前を呼んだ。



「ん」



満足げにうなずく部長。

そんな些細な仕草も、やっぱりかわいいと思ってしまう。今日は部長にトキメキスイッチをぐいぐい押されっぱなしで、心臓に悪いよ……。


それにしても『ササグ』って、きれいで、素敵な名前だな。唇に乗せた雰囲気も、音も、涼やかだ。

だからつい、今日だけじゃなくて、ずっと名前で呼べたらいいのに……なんて、希望に満ちた未来を考えてしまう……って!

いや、だめだめ。忘れちゃだめよ、美琴。
これは「予行練習」なんだから。

普通の恋人同士に見えるための部長の『特訓』なんだから!


邪心を振り払うように、プルプルと首を横に振った。


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