上司と上手につきあう方法【完結】

けれど、ドアを開けても、なぜか当然のごとく、部長までついて来て、戸惑ってしまう。

まぁ、トイレと言っても、ドアを開けるとまず正面は大きな鏡と、その下に涼しげなガラスの洗面台があって、奥まったところに肝心のトイレがあるから、そんな変な感じはしないんだけど……。


荷物を置きつつ、ぱたんと背中でドアを閉めたらしい部長を振り返ると


「あの、急に泣いたりしてすみません……きゃっ……!」


振り向きざま、部長に正面から抱きしめられてしまった。


広くて厚い胸板と、意外にたくましい二の腕。

ただ物理的に抱きしめられているだけなのに、なんだか胸がいっぱいになってしまう。



「ぶ、ぶちょ、あの、」

「そうじゃない……だろ」



どうにか顔を上げると、部長が私の頬にはりついた髪を指で取り除きながら、顔を近づけ、低い声でささやいた。



「え、っと、あの、そうじゃないって?」



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