上司と上手につきあう方法【完結】
「名前」
「あ……」
少し咎めるような声色に、ハッと思い出した。
そうだった。部長じゃない、名前で呼ぶって約束したんだ。
でも、そうだったけど、今は、二人っきりで演技する必要もなくて……え、まだ練習なんだろうか?
思考の糸がもつれる。
ぐるぐるして、ほどこうと思っても、絡まって。
言葉を失っていると、
「――美琴」
部長の両手が、涙で冷たくなった私の頬を包み込んだ。
そして頬を傾けた彼は、そのまま上半身を近づけて、私の唇にキスを落とした。
唇が重なった瞬間、全身が、痺れるような快感で震える。
薄く開いた唇の隙間から、部長の舌がねじ込まれると、理性とかそういう人間的な感情がぶっ飛んでぐにゃぐにゃと全身の力が抜けてしまう。