上司と上手につきあう方法【完結】
「きゃあっ!」
抱き上げられ、いきなり視界が変わって、バランスを失いそうになった私。慌てて部長の首の後ろに腕を回ししがみつく。
「ぶ、ぶちょ!」
「――」
部長は無言で私を抱いたまま、スタスタとベッドへと向かい、私を丁寧に横たわらせる。
そして部長も腰を下ろし、上半身をひねるようにして私の体の横に両腕をついた。
そもそも一人で寝るだけのシングルベッドだ。
二人で乗ると、ギシギシ音がして――妙に扇情的に聞こえる。
「あ、あの」
「俺たちには、もっとコミュニケーションが必要なようだな」
「こみゅに、けーしょん……?」
「ああ……まさか、足りないとは思わなかったが、受けて立とうと思う」
腕の檻の中から、見上げる部長は、中指でメタルフレームの眼鏡を押し上げつつ、にっこりと微笑んだ。