上司と上手につきあう方法【完結】
終点から、思わずエスカレーターを駆け上がる。
スキップしたい気持ちを抑えて、改札から一般車用ロータリーへと急ぐと、彼が軽く手をあげ近づいてくるのが見えた。
「お帰り」
「ササグさん、ただいま!」
着なれた感じのシャツに、デニム。
髪は相変わらず短くて、さっぱり。
ダブルベリーを辞めてから一年。
それまでずっと張りつめたような顔をしていたササグさんは、今はどこか穏やかな、ゆっくりと呼吸をする雰囲気に変わった。
眼鏡がメタルフレームから柔らかい感じのセルフレームになったせいじゃない。
きっと今の生活が、彼にあっているのだ。
「あのね、注文、結構来てね!」
「ああ。実は塩田さんから聞いた」
「えっ、そうなの? もうっ……」