上司と上手につきあう方法【完結】
こっくりとうなずく私。
それは数か月前から、話に聞いていたことだった。
塩田さんの知り合いの小さな洋食屋さんなんだけど、店主が年齢を理由にお店を畳みたいらしく、誰かに買ってもらえないか探しているんだって。
けれどそれには条件があって、自分が生きている間は、看板はそのまま、店を潰さないで欲しいってこと。
亡くなった奥様との思い出が、うんとつまったお店だから、それさえ守ってくれるのなら、死んだあとは好きにしてくれて構わないって。
(要するに居抜き出店ってやつなのかな。)
話を聞いて、いったいどんなお店だろうとこっそりランチを食べに行ってみたら、本当に素敵なお店でビックリしてしまった。
キッチンはもちろんのこと、お皿もグラスも顔が映りそうなくらいピカピカで、周囲は緑に囲まれていて、空気がよくて。
このレストランは、ここに、こういう形で息づいているんだって伝わってきて、私もササグさんも、一目で気に入ってしまったんだ。
そこでササグさんは、塩田さんと、叔父さま夫婦に相談し、とんとん拍子に進み、来月からその洋食屋さんで働くことになった。
やっぱり、いきなりお店を渡されるよりも、調理器具のくせとか、常連のお客さんとかと触れ合っておきたかったらしい。