上司と上手につきあう方法【完結】

「結婚?」

「ああ」

「嬉しい!」

「俺も」



笑顔全開になる私を見て、ササグさんが穏やかに微笑み、それからおそるおそる、といった風に、私のおでこに唇を押し付ける。



「幸せだ……。ありがとう、美琴」



たった一言。彼のその言葉だけで、私はもっと幸せになる。



「何、言ってるの。ササグさんは、もっともっと、幸せになるよ。こんなもんじゃないよ。私がしてみせるって言ったでしょ? そうそう、以前、自己流じゃなくて、ワインをもっと勉強したいって言ってたよね。私、仕事バリバリ頑張って、フランスとかイタリアとかに連れて行く。で、世界中のおいしいものをたくさん食べて……」



夢は大きく。

ずっと考えていた夢を口にすると、ササグさんはまた、感極まったように目を細め、眼鏡の奥の瞳にうっすらと膜が張る。



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