上司と上手につきあう方法【完結】
っていうか、そもそも朝陽の存在自体が、私に長く付き合えるような恋人を作らせなかったのだから、こんな考え自体彼の幻影に惑わされているも同然で――
本当にばかげてると思う。
あー、やだやだ……。
情けない自分を奮い立たせ、バッグをつかみ立ち上がった。
薄暗くなった廊下をエレベーターに向かって歩く。
晩御飯、どうしようかな。ちゃんとしたもの食べたい気分だったけど、もう、コンビニでいいかな……。
ぼんやり考えながら、エレベーターの前でドアが開くのを待っていたら、ドアが開いて――
エレベーターの隅っこに寄り掛かるように、一人の男の人が立っていた。
人が乗っているとは思っていなかった。ギクッと立ち尽くす私。
その人は、片手で目元を覆うようにして立っていて――
エレベーターが到着したことに気付いて、ゆるゆるとその手を外し、私と目が合う。