上司と上手につきあう方法【完結】
そっちがその気ならそれでもいいわよ。
私だって彼氏が欲しくて合コンに来たんだから。
山本朝陽は他人です。
他人です!
自分に強く言い聞かせ、彼を視界に入れずに合コンモードに切り替える。
それから合コンの間中、朝陽の視線は、ちょこちょこと私に向けられたような気がした。
そのことに気づいてから始まった、胸の奥の心臓の妙なドキドキは、なかなか収まってくれない。
気が付いたらいつも以上にグラスを重ね、アルコールが回っていた。
「――ちょっと酔いさましてくる」
隣に座っていた紗江子にささやいて、バッグを持ち席を立つ私。
トイレに行って、手を洗い、深呼吸をした。
山本朝陽は大学生の頃、十八から二十にかけて、二年間付き合っていた男だ。
彼が通っていた大学の軟式テニスサークルに所属した縁で知り合った。
人懐っこくて、明るくて、いつだって輪の中心にいるようなそんな男だった。