上司と上手につきあう方法【完結】
冗談めいてささやくと、彼は一層眉間のしわを深くする。
どうやらまだまだ、部長の傷は深いらしい。
「すみません……」
口ごもる彼にペコリと頭を下げると、後頭部をポカリと、叩かれてしまった。
「馬鹿」
けれどその口調はどこか優しくて。
「コーヒー、うまいな」
「よかったです」
真面目な顔でコーヒーを飲む彼を見て、私もなんだか無性に嬉しくなった。
部長はコーヒーを飲んだ後、片づけると言ってくれたけれどそれはさすがに遠慮した。
玄関で靴を履く彼を見送っていると、
「――平尾」
彼はドアノブに手をかけたまま、私の名前を呼ぶ。