上司と上手につきあう方法【完結】
「はい、なんですか?」
「――た……」
「え?」
彼は私に背中を向けたままだったし、声が小さくて、よく聞こえなかった。
「――俺も……」
俺も――なに?
「部長?」
どうしたんだろうと、シューズボックスに手をついて彼の顔を覗き込むと同時に、
「楽しかった」
と、部長がささやいた。
その横顔はいつも通り険しく見えたものだから、何が楽しかったんだろうなんて、考え込んだりして。
だけどすぐに、彼が私との時間を『楽しかった』と言ってくれたのに気付いて、
「あ……え……? はい……」
なんて、間抜けな相槌をうってしまった。
『あ、え、はい』ってなんだよ!って思ったけど。
だけど驚いて、それ以上何も言葉は出てこなかったんだ。